スーツや礼服の春夏物と秋冬物の違いは何?
スーツや礼服を購入しようとする時に、まず「春夏物」と「秋冬物(又はオールシーズン用)」で、どちらかを選択するのではないでしょうか。
もちろん購入するためにお店へ出向いた季節により、お店の中の商品が全て「春夏物」であったり「秋冬物」であったりすることもあります。
「そんなこと気にもしていなかった」と感じる方もいらっしゃると思います。
ですが、私たちアパレルの人間にとっては、やはり大きく異なるものとなります。
今回のコラムでは、スーツや礼服の「春夏物」と「秋冬物」の違いについて書いていきたいと思います。
生地の違い
春夏物と秋冬物の違いで、重要な項目である生地の違いを説明します。
まずキーワードとなる以下の単語を整理していきます。
・単糸(Single Yarn):特徴: 糸が一本だけで構成されており、通気性が高く軽量な生地です。
・双糸(Double Yarn):特徴: 2本の細い糸を撚り合わせて作られる生地で、丈夫でしっかりとした質感があります。
・平織(Plain Weave):特徴: 糸が縦横に1本ずつ交差するシンプルな織り方で、生地が薄く柔らかいのが特徴です。
・綾織(Twill Weave):特徴: 斜めに交差する織り方で、光沢があり柔らかく、しっかりとした風合いがあります。
一般的に、春夏用は通気性や軽さを重視するため、単糸を用いた平織の生地を使用することが多くなっています。
また秋冬用は、平織よりも気密性の高い綾織で双糸を用いた生地を使用することが多くなっています。
また綾織は、独特の綾目もあり、綺麗な光沢感と柔らかい生地感が特徴となります。
付属品の違い
続いて、春夏物と秋冬物の違いで、付属品の違いについて説明します。
付属品の違いについては、生地と違って、商品を見ただけでは判別できません。
春夏物と秋冬物で、代表的な付属品を2つご紹介します。
・肩パット・・・肩部分のシルエットを整えるもので、元々通気性の高い付属品ですが、春夏物はより通気性の高い物を使用しています。
・毛芯(キャンバス)・・・ラペルの形を整えるもので、高級スーツと言われる部類に多く使われていますが、こちらもより通気性の高い物を使用しています。
※夏場はウォッシャブルスーツも店頭に出てくるため、これらの付属品を使用していないスーツも多々あります。
仕様の違い
最後に春夏物と秋冬物の違いで、もっともわかりやすい仕様の違いについて説明します。
これは有名なので、もしかしたら皆さんご存じではないでしょうか。
・背抜き仕様・・・春夏用に多く見られる仕様で、背中部分の裏地をカットしてあり、通気性の高い仕様
・総裏仕様・・・秋冬用に多く見られる仕様で、背中部分を裏地でしっかりと覆っているため、保温性の高い仕様
・半裏仕様・・・盛夏に特化した仕様で、夏用礼服などに多く見られる仕様。大部分の裏地をカットしているため、軽量且つ通気性の高い仕様
※使用する裏地も近年の技術革新により、保温性の高い裏地・冷感作用のある裏地・メッシュになっている裏地など、様々な機能性裏地を使用しているケースがあります。
最近のスーツの傾向
最近はクールビズの浸透により、夏場はスーツを着用されない方も多くいらっしゃるようです。
なので、メーカーとしても、生産するスーツの傾向が大きく変わってきています。
上述のように、特にスーツは「春夏用」と「秋冬用」に分けて生産していましたが、各スーツメーカーは春夏物の売れ行きが悪く在庫過多になっている傾向です。
そこで最近では、秋冬用の少し地厚な生地を用いて、春夏用の背抜き仕様を施した【オールシーズンスーツ】が登場してきました。
以前は色柄も少なかったですが、それも解消されてきているようです。
このようにコロナ禍から現在にかけて、働く人の環境が大きく変わってきたことにより、アパレル各社も必死に時代の流れに乗り遅れないようにしているのが現状です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
人によっては、夏はスーツを着ずにスラックスとワイシャツのみ、秋冬春を秋冬用スーツで過ごすというような方も増えてきているようです。
現在は「春夏用」と「秋冬用」に分かれているスーツも、近い将来には変わってしまう可能性は大きいのではないかと感じています。
皆さんのお役に立てるコラムになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。